生き方

『棒を振る人生』佐渡裕

佐渡さんの3作目、私が読むのは2作目です。
1冊目では、恩師バーンスタインとの思い出が濃く描写されていました。
この本では、佐渡さんの、自身がオーケストラにどハマりした少年であったことから今同じような状態の子供たちに対する想いや、海外のオーケストラとの共演にまつわる感動的なストーリーや、反対に、それがどれだけ難しいことかが書かれています。
私は普段アマチュアオーケストラで、プロの指揮者の方に振っていただくことがほとんどなので、受け身というか、音楽を教えていただく側、という立ち位置になりがちです。
最近指揮者の方のお話を伺っていると、奏者の方からもっとこう弾きたい、みたいな想いがでてくるといいと言われることがあります。
指揮者の作りたい音楽は正解、不正解ではなく解釈の一つであり、別の解釈を持つ人がいてもいいと。
それをまとめるのは指揮者の役割なのですが、先日ケルンのプロオケの演奏会を聴きに行ったとき、オケの表現したいことはもちろん、指揮者とオケのコミュニケーションの反応の良さが本当に素晴らしくて、いい関係を気づいているのだな、ということがよくわかりました。
そうした中でのパフォーマンスはもちろん最高で、拍手がなかなか鳴り止まず、ブラボーなどの掛け声はまだ禁止されているため、お客さんみんな立って、拍手も低い位置ではなく頭の上で、オーケストラってやっぱりいいな、と思いました。

オケの奏者が一流であるのは当たり前のことなのですが、それぞれの魅力を引き出して、まとめて、自分のこだわりも表現する、という指揮者の仕事をどれだけ果たせるかというのはオケと指揮者の関係性が大きく影響します。
この本でも書かれていますが、指揮者の振りたいテンポでは弾けないと奏者に言われ、しかし楽譜の指示もそうなっているしそう振りたいと伝えると、じゃあ弾いてみろと言われるなど、私たちのトレーナーの先生への苦手意識など本当にちっぽけなものだなと思います。
私の所属するオケで指揮を振ってくださった先生も、プロのオケだとコンマスと対峙するような形になるとおっしゃっていて、双方の想いが時にぶつかり合って、まとまって、いい演奏ができるのだな、と思います。

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